治療内容 - 大動脈

大動脈瘤

全身に血液を送る大動脈という太い動脈が瘤となり大きく膨らみ、放置すると破裂の危険がある病気です。

大動脈は風船に例えると、最初は膨らみにくいですが、大きくなればなるほど膨らみやすくなります。血管の内側から血圧がかかっているため、膨らみ弱くなった血管の壁が裂けたり破裂したりする危険性があります。ひとたび破裂すると病院に着くまでに助からない方がほとんどと言われています。
そこで破裂を未然に防ぐために瘤になった大動脈を手術で人工血管に取り換える手術やカテーテルで血管の内側から人工血管をおいてくるステントグラフト治療が行われます。
手術とカテーテル治療はどちらも、一長一短であり、患者さんの年齢や全身状態、血管の状態などで選択していきます。

局所麻酔で切らないステントグラフト治療

ステントグラフト治療というと、お腹を大きく切ることはありませんが、やはり全身麻酔をかけて、左右の鼡径部を数cm切開して血管の中にカテーテルを挿入して手術が行われるのが一般的です。
当院ではカテーテル治療のメリットを最大限に生かして、全身麻酔でなく局所麻酔下でこれまでのカテーテル治療と同様に行い、また鼡径部の血管の状態が良ければ、皮膚を切開することなく手術を行っています。
基本的に4日間の入院で行っています。

大動脈瘤の経皮的ステントグラフト内挿術

一般的なステントグラフト治療

低侵襲ではあるけれども

  1. (1)全身麻酔が必要 → 食事開始や歩行までに日数がかかる。
  2. (2)左右の鼡径部を4-5cm切開する必要 → 痛みや合併症の可能性

当院で行っているステントグラフト治療

体への負担をより少なくするため

  1. (1)全身麻酔はしません → 従来のカテーテル検査や治療と同じように局所麻酔で行いますので、起きたまま動脈瘤の治療が可能で、治療後から食事ができ、翌日から歩行できます。
  2. (2)皮膚を切開しません → 傷は残らず、痛みや合併症も少ない

腹部大動脈瘤を低侵襲で行うMIAS手術

腹部の大動脈瘤を人工血管で取り換えてくる手術は、従来のお腹を20-30cm大きく切開する方法で長い時間、腸管を空気にさらして手術していたため、術後しばらく食事を食べることができませんでしたが、当院では10cm前後の小さな切開(MIAS:Minimally Invasive Aortic Surgery)を導入しており、腸管を空気にさらすことなく、短時間(2時間前後)で手術を行うことで、現在では手術当日から経口摂取を開始し、傷の痛みも少ないため、翌日にはほとんどの方が歩いて、早い方は1週間ほどで退院ができます。

図:大切開と小切開

急性大動脈解離

大動脈の壁が突然、裂けてしまう恐ろしい病気です。

裂けた部位や範囲によって、A型とB型に分かれます。

  年齢 性別 術式 手術時間 生存
1 72歳 男性 上行置換+CABG 8時間41分 生存
2 63歳 男性 上行置換+CABG 6時間 生存
3 51歳 男性 上行置換+大動脈弁形成術 5時間58分 生存
4 84歳 女性 上行置換+大動脈弁形成術 3時間41分 生存
5 57歳 男性 上行置換+僧帽弁形成術 6時間22分 生存
6 74歳 女性 上行置換 3時間5分 生存
7 73歳 男性 上行置換+大動脈弁形成術 6時間24分 生存
8 68歳 男性 上行置換+大動脈弁形成術 4時間22分 生存
9 70歳 男性 上行置換+下肢バイパス 5時間30分 生存
10 65歳 女性 上行置換+大動脈弁形成術 6時間9分 死亡
11 79歳 女性 上行置換+大動脈弁形成術 4時間23分 生存
12 71歳 男性 上行置換+CABG 4時間41分 生存
13 49歳 女性 大動脈基部再建+上行置換 6時間43分 生存

B型解離に対するステントグラフト治療

これまでB型解離は、保存的治療で急性期を乗り切るのが一般的でした。しかし遠隔期に瘤の拡大をきたし手術が必要になることも多く経験します。B型解離にもステントグラフト治療が行われるようになり、早い段階でエントリーをふさぐことで、きれいに治癒していく症例もあります。