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バックナンバーです。診療体制等、現在のものとは異なる場合があります。
ことのほか暑かった今年の夏もようやく終わり、朝夕の寒さを感じる季節になりました。日頃先生方には、大変お世話さまになり感謝申しあげます。今回は、松本協立循環器センター長の山崎恭平医師より"不整脈の診断と治療"についてご案内いたします。
センター長 山崎 恭平
不整脈と言っても無害な期外性収縮から、致死的心室細動まで様々です。当循環器センターでどの様に加療しているか述べたいと思います。
これには洞結節機能が低下して起きるSSS(sick sinus syndrome)と房室伝導が切れる房室ブロックがあります。特殊な例を除き高齢者に多い病気です。どちらも、永久ペースメーカの適応です。他の心機能は温存されているのに心臓の電気機能だけ悪化している方が大部分です。ペースメーカ(以下PM)は、高価な医療機材ですが、これのお陰でまた以前と同じ生活が送れるなら、余程、痴呆で寝たきりの方でない限りは植え込んでいいと思います。患者さんには「白内障の手術と同じで長生きしていると、こういう手術が必要になる」と話します。大抵局麻だけで1時間以内に終了します。最近のPMは小型化されただけでなく、体動に合わせて心拍数が増えるのは当然で、中には発作性心房細動を抑制するPMもあります。SSSの人の中に、徐脈頻脈症候群と言って心房細動の頻脈を合併する患者さんがいますが、そういう方に有効です。当センターでは年間に新規植え込みが60例、電池交換が40例位あります。特に開業医の先生方からの房室ブロックの患者さんの紹介が多いのが特徴です。また、PMの合併症に感染と言う厄介なものがあります。近隣の病院からPM本体やリード抜去の依頼が年に1-2例あります。1年以上経ったリードを抜くのは難しく、内科と外科で協力してやっています。最近は大腿静脈からリードを把持するかん子を挿入してできるだけ心臓に近いところでリードを把持して引っこ抜きます。外科が立ち会っていて、だめな場合は直ちに手術的に抜去します。
発作性上室性頻拍症(paroxysmal supraventricular tachycardia以下PSVT)と言う不整脈があります。これは、突然150-170の規則正しい頻拍になります。昔は頚動脈をマッサージしたり、眼球を圧迫したりして止めました.当直をしてると、必ず月に5人は来てワソランやATPで止めたものです。ところが、最近はめったにお目にかからなくなってしまいました。それはablation と言う治療法が普及して、当センターと信大で中信地域の患者をほとんど治療してしまったからです。Ablation とは電極カテーテルの先端が4mmのチップになっていて、そこに高周波通電をして組織を凝固壊死させて、電気伝導させなくすることです。温度設定が安全のため着いていて60度以上になりません。PSVTは半分はWPW症候群に伴うもので副伝導路が弁輪にあり、これと房室結節を回路にして、回ります。その副伝導路をablationすると頻拍は起きなくなります。もうひとつは房室結節性頻拍と言って、昔、房室結節が縦に割れていて2種類の伝導パターンを示し、房室結節の中でリエントリー回路を作ると言われていたものです。実は、その1つのslow fiberは房室結節に付着しているだけでそのfiber をablationすると起きなくなることがわかりました。いづれも先天性のものですから、頻拍発作が認識できるようになった思春期の頃に治したほうが効率的です。
長島監督の脳血栓で話題になった心房細動ですが、洞調律に比べて5倍血栓症の確率が高いそうです。心房細動はできるだけ、洞調律を維持したほうがいいのか、あるいは心拍数だけコントロールするだけでいいか大規模studyが進行中です。当センターでは10種類近い抗不整脈薬の中から、その患者にあった処方を選びます。そして血栓の可能性の高い患者にはワーファリンを併用しています。最近右房から左房にBrokennbrough と言う方法で穴を開け、心房細動のフォーカスになっている肺静脈を左房からablation
で電気的に分離する治療法をしている医療機関がありますが、成功率がまだ低く有効性も確立しておらず、様子を見ています。それに対して心房粗動はablation の良い適応です。古典的なのこぎり波の心房粗動は三尖弁の周りを300/分で周っていることが判明し、一部を線状にablation すると起きなくなります。
次に高円宮殿下で話題になった心室頻拍ですが、中に特発性心室頻拍と言ってablation が有効な物もありますが、心室頻拍の場合再発すると致死的になるので確実な治療が望まれます。現在は植え込み型徐細動機 (implantable cardiac defibrillator 以下ICD) が確実な治療法です。
ICDは施設認定が必要なため、佐久病院や諏訪日赤など他所の病院からの紹介も多いです。心室頻拍を起こす疾患は、心筋梗塞、心筋症、サルコイドーシスなどがあります。当センターでは、元信州大学教授の関口先生が心筋病理を今も読んでくれてることでサルコイドーシスの症例が多いです。まとめて、去年Euro PACE と言う国際学会に発表しました。
最近話題なのが、Brugada 症候群です。これは、突然死する人の中に右脚ブロックでV1-2の誘導でST上昇がある人がいることをイタリアのBrugadaさんがまとめて発表しました。アジア人に多く40代の男性が明け方心室細動をいきなり起こし、ぽっくり亡くなります。最近では高校生の心電図健診にこれも引っ掛けてきます。しかし、こういう心電図の方は多く、全員にICDを入れる訳にいかず、どのひとが、心室細動を起こす可能性が高いか検討しています。
心臓外科で手術中に不整脈の治療を行うことがあります。心室瘤を切除する際、その周囲の心室頻拍を起こす部位を冷凍凝固します。これは-70度のプロ-ベで焼きます。最近では弁膜症などの手術の際、心房細動の患者に肺動脈を分離するよう線状に冷凍凝固すると術後洞調律となります。

不整脈と離れますが心不全の治療は、最近日本でも心臓移植がスタートしましたが普及するには時間や様々な問題があります。今年から日本でも認可された新しい心不全の治療に両室ペーシングがあります。これは、心不全の患者の中で左脚ブロックのようにQRSの幅の広い患者に、右室と左室と同時にペーシングすると、左室全体の動きが一体化して、駆出量が増えると言う原理から行われるようになり、実際大規模研究で臨床効果が認められました。左室は冠静脈洞からリードを入れます。当センターでも認可がおりる前からリードを個人輸入して開始していました。薬が限界で諦めていた心不全の患者さんが劇的に改善することもあります。また、NYHA3度以上の患者の半数は心室頻拍で突然死します。中にはICDと併用している患者さんもいます。
兎角、心臓は虚血性心疾患が主になり、不整脈治療がおろそかになります。しかし、折角バイパスした患者が心室頻拍で突然死しては、もともこもありません。心臓全体をしっかり管理する必要があると思います。
当院の睡眠センターが昨年7月にオープンし1年が経ちました。今回、このセンターの開設一周年記念行事として、7月31日に浅間温泉文化センターにて、「睡眠に関する市民公開講座」を開催しました。
講演は、井上雄一先生(代々木睡眠クリニック院長)にお願いし「昼間眠くなるって病気なの?」というタイトルで、様々な睡眠障害についてお話をして頂きました。質疑の時間では、睡眠についての日常的な質問や悩みなど、こちらも時間が足りなくなるほど出され、睡眠についての関心の高さが感じられました。
八重樫医師の報告では、検査や治療のため、多くの方がセンターを利用している事、中信地区以外の長野や諏訪からも検査に来られていたことなどの報告があり、一年間で大きな実績を得た事を実感しました。
今回の講座には280名の参加がありました。医療関係者、検査を受けた方、友の会の方、マスコミや業者の皆さん、多くの方々の協力で成功することができました。ありがとうございました。今後、睡眠について共有できるセンターに発展できればと思っています。これからも宜しくお願いします。
(検査科長 渋谷和伸)