心肺運動負荷試験(CPX)とは?【登山者検診のご案内】

血圧、心電図、呼気ガスを計測しながら、エルゴメーターと言われる自転車こぎを行っていただきます。

CPX

CPXでわかること・できること

① 狭心症の検出、運動誘発性不整脈の評価

登山中の突然死の多くは心筋梗塞や致死的不整脈によるものと言われています。運動負荷を行うことで登山中に心筋梗塞に発展しうる重症狭心症を検出することができます。また、運動負荷に伴って不整脈が誘発されることがあります。不整脈の種類によっては突然死につながるものもあります(致死的不整脈と言います)。致死的不整脈でなくとも登山中に不整脈をきたせば運動耐容能は著しく低下し、行動不能となることがあります。
CPXでは血圧、心電図、酸素飽和度をモニターしながら安全な状況で十分な運動負荷がかけられます。

図1:CPXによる狭心症の検出

CPXによる狭心症の検出

安静時の心電図は正常波形ですが、運動負荷中にのみ狭心症を示唆する変化が出現します(部分)。

※事前にCPXを行っても、登山中の心筋梗塞や不整脈の発症を100%防げるわけではありません。

② 運動耐容能の評価

ヒトは1日に20000回ぐらい呼吸をしています。呼吸によって酸素(O2)を取り込んで、二酸化炭素(CO2)を排出しています。登山のような持続的な身体活動を維持するためには、必要なエネルギーを供給し続けるために「3つの歯車」①肺、②心臓・血流、③筋がスムーズに回転しなくてはなりません。これを「ワッサーマンの歯車」といいます。
下の図を右下から順に見ていくと、酸素(O2)が吸気によって肺に取り込まれ、肺胞を介して肺循環から血流・心臓に移行します。血流にのった酸素は末梢循環をへて筋肉に届けられます。筋肉内に存在するミトコンドリアによって食物から得られた炭水化物や脂肪を利用して、酸素(O2)は水と二酸化炭素(CO2)とエネルギーに変換されます。二酸化炭素(CO2)は血流を介して心臓から肺へと運搬され、呼気として体外に排出されます。

図2:ワッサーマンの歯車

ワッサーマンの歯車

CPXでは呼気ガスモニターを用いることで、ワッサーマンの歯車でいう出入口にあたるO2摂取量、CO2排出量を評価することができるため、心臓のみ、肺のみ、血管のみといった単独の臓器を評価するのではなく、肺機能・心機能・末梢循環・肺循環・骨格筋機能を含んだ全身の運動耐容能が評価できるのが大きな特徴です。

CPXの指標

図3:CPX検査結果

CPX検査結果

負荷量(■WR)が上がるとともに、酸素摂取量(□VO2)は平行して増加します。
被験者が自転車をこげなくなった時点のVO2がPeak VO2です。ATはその他の指標を組み合わせて判断します。

CPXを行うことで多くの指標が得られますが、その中でも重要な指標としてPeak VO2、AT、Peak VO2/HRが挙げられます。

Peak VO2(最高酸素摂取量):これ以上もはや運動ができないという強度における酸素摂取量

Peak VO2が一般的には運動耐容能の代表的な指標として用いられます。主に酸素運搬能力を示していると考えられており、図2でいうところの②心臓の要素が大きく関わります。短時間(数分〜十数分程度)で高強度の持久運動をする際の制限要因となります。登山に置き換えるとバリエーション登山やクライミング、トレイルランニングなどかなりハードな動きをする際に影響します。一般登山道においても岩稜帯を歩く際には関係してきます。

AT(嫌気性代謝閾値):好気的代謝に無気的代謝が加わる時点での酸素摂取量

ATは有酸素運動から無酸素運動に切り替わるポイントでの酸素摂取量であり、主に筋肉での酸素利用能力を示しています。長時間のマイペース運動をする際の制限要因となります。登山の場合は数時間にわたり一定のペースで歩き続ける必要があることからATレベルでの酸素摂取量によって登高ペースが決まります。ATレベル以下で歩くことで疲労を感じることなく(乳酸を蓄積することなく)、安全に歩き続けることができます。

Peak VO2/HR(最高酸素脈):最大負荷時の心拍出量(心ポンプ機能)の指標

VO2/HRとは、1回の心拍出によってどの程度の酸素摂取量が得られたかを表す指標であり、Peak VO2/HRとは最大負荷時の心ポンプ機能を推定できます。 心臓のポンプ機能は心臓超音波検査でも評価できますが、あくまで安静時の指標です。狭心症の方などは安静時には心ポンプ機能は正常でも、運動負荷時のみ心ポンプ機能が低下していることがあります。
そのような方は下肢筋力や心肺機能が十分であったとしても、運動耐容能は低下しており、そのまま登山を行うことは危険です。