小児科PEDIATRICS
Ⅰ.はじめに
松本協立病院では小児科専門医を目指す若手医師に対して、以下のような小児科医師像を求め、指導することを考える。当然小児科医として研修終了後も時間をかけて達成すべき課題も含まれるが、到達レベルは様々でも目指すものはつねに同じという視点からあえて目標として掲げる。
Ⅱ.私たちの目指す小児科医師像
第一に、子ども本人や家族からの様々な要求/不安に応えることができる幅広い知識と態度を身につけた総合的な小児科医であること(患者にとっての総合的な小児科医であり、疾患の種類や有無に関係なく主治医として担当できる)
第二に、小児科の中でも自分の得意分野ではつねに最先端の診療技術をもち、他の小児科医にとって指導や助言にあたることで県連小児科医師集団をリードできる力量 をもった小児科医であること(小児科分野の専門性も兼ね備えた小児科医)
第三に、民医連の病院/診療所に勤務するにあたり、小児科を専門としない他科医師や他職種と協力して小児医療サービスを提供するために、他職種との共同の中で子どもの専門家としてのリーダーシップを発揮する能力、および研修医に指導する技術をもった小児科医(病院や診療所の中での小児科医としてのリーダーシップ)
第四に、これら自己の総合的/専門的な力量を保持できるように自ら学習し続けられる能力をもち、つねに外部との連携をもてる医師(学び続けることができる小児科医)
以上の4点を兼ねそなえた小児科医の育成を目指すのが私たち長野県民医連小児科部会の目標である。専門性に偏ることなく一般小児科医としての総合的な能力において優れ、論拠に基づいた科学的な医療を実践でき、かつ子どもや家族から頼られる人間性のある小児科医師となることを希望するすべての研修医のために協力する。
Ⅲ.プログラムの概要
①地域や家庭に対する小児科医としての役割が担える
- 子育て支援活動(啓蒙活動、仲間づくり、子育てネットワーク)が実践できる
- 虐待や不登校など、主に家庭や地域で問題となる課題に対処できる
- 学校や行政、医師会、施設との連携ができる、園医・校医活動が担える
- 子どもの権利条約を説明でき、権利の擁護者として振る舞える
- 小児疾患のホームケアについて説明できる
- 事故防止のための指導・啓蒙ができる
- 各分野の専門医師を知っており適切にコンサルト・紹介できる
②外来での小児科医としての役割が担える
- 血管確保、採血、浣腸、導採尿、髄液検査、各種検体採取などの基本手技
- 診察(聴打診、触診、鼓膜や皮膚の視診など)ができる
- 診察や検査や治療にあたって小児の鎮静や抑制を実施できる
- 心の問題を念頭においた適切な面接や指導ができる
- 小児の一般的検査が実施でき所見が判断できる(血液、尿、レントゲン、エコーなど)
- 感染症(気道、尿路、腸管、皮膚など)の診断と治療ができる
- 感染症と鑑別の必要な他疾患が診断・除外できる
- 学校伝染病の対処(診断、治療、治癒証明)ができる
- 学校検診の二次精査が実施できる
- 成長に関する医療相談(発育不良、夜尿症、習癖など)に応じられる
- アレルギー性疾患(ぜんそく、食物アレルギーなど)の管理ができる
- 小児の頭痛・めまいの精査と治療ができる
- 小児の不定愁訴に対応できる
- けいれんと意識障害の初期対応と鑑別診断ができる
- 子ども領域の皮膚、整形、耳鼻、泌尿器、歯科的な境界領域を担当できる
- 小児の救急蘇生、アナフィラキシーショック治療ができる
- 予防接種が適切に実施できる
- 乳児健診(成長評価、離乳食の基本など)が実施できる
- 小児期の発達障害、知的障害、身体障害について知識がある
③入院での小児科医としての役割が担える
- 入院の必要な疾患が判断できる、また退院の時期が判断できる
- 入院の必要な一般的な感染症(気道、尿路、腸管、神経)が確実に治療できる
- 呼吸不全の酸素療法が実施できる
- ぜんそくの入院治療が担当できる
- 小児の胃腸障害の輸液や食事療法が正しく行える
- けいれん重積の治療、経過観察ができる
- 川崎病、アレルギー性紫斑病の治療ができる
- 腎炎(急性腎炎)とネフローゼの治療ができる
- 検査入院(内分泌など)ができる
- 新生児の扱いが正しくできる
- 退院後の指導ができる
④その他
- 小児特有の薬物量、禁忌薬が指示できる
- 妊婦、授乳婦に対する投薬の原則をいえる
- 看護や事務、相談員などに対して指導できる
- 卒後臨床研修の経験を生かし、内科系・外科系の一般救急の力量を継続する。
⑤教育・研究
- 学会発表ができ、学会参加で学ぶことができる